あこがれの会社へ!

 

テープ起こしの仕事を知って、

勉強を始めたころから、

「あの会社のスタッフになれたらなぁ・・・」

って、ずっとあこがれていた会社がありました。


そこは、大手の速記会社。

テープ起こしの仕事を知る前から、

なんとなく、名前は聞いたことがあったんです。

 

歴史があって、

しっかりとした会社で、

国会などの議事録も手がけている、

一流の速記士たちをそろえているような、

そんな会社です。

 

会社のホームページを見ると、

テープ起こしの在宅スタッフを募集しています。

 

募集要項は、

「四年制大学卒者。または同等の国語力のある者。経験者優遇。」

「国語、一般常識の筆記試験あり。」

となっていました。

 

四年制大学卒 ・・・。

 

わたしは、フツーの高校を卒業して、この仕事にまったく関係のない、専門学校卒。

だめじゃん。

同等の国語力ってどのぐらい?一

般常識の問題って、いったい、どんだけ難しい問題が出るんだろう・・・。

 

で、

もう、すっかりあきらめていました。


ところが、

そんなわたしの背中を、

とてもいいタイミングですーっと押してくださった方がいたんです。

テープ起こしのメーリングリストのオフ会で出会った方でした。

わたしが、それまでのいきさつと、落ち込んでいることを話して、

「あの会社にずっとあこがれているけれど、大学は卒業してないし・・・」
                
とぽろっとこぼしたとき、 

 

「試験、受けてみたらいいじゃない。

だって、はじめから落ちると思っているなら、

ほんとうに落ちてしまっても、失うものは何もないでしょう?」

と言ってくださったんです。

目から、ホントにウロコが落ちた気がしました。

 

そうだよ。失うもの、ない。

そんなに喜ばしいことでもないけど(汗)、とってもウレシイ気持ちになってきました。


そうして、

わたしは、あこがれのその会社に、履歴書を送ってみることにしたのです。

 

速記会社の採用試験

 

大手の速記会社。

ずっと、狭き門だと思っていました。

採用試験に落ちた人の話をいくつも耳にしているし、

実際、わたしは募集条件に見合っていません。


でも、この会社なら、わたしが目指しているところにたどり着けるような気がしていました。

在宅勤務者として、こつこつとテープ起こしの仕事に専念できる。

もっと、もっと、技術的にもレベルアップできる。

そんな気がしていました。

 

そして、意を決して、履歴書を送ってみる・・・。

 

なんと! すぐに会社から電話がきて、試験と面接をすることになりました。

 

えーー! 門前払いだと思っていたのに~。 (←うれしい悲鳴^^)

 

 

当日、スーツを着込んでいざ出陣。

だけど、緊張と意気込みすぎ、さらに、なれないヒールで足がもうすでにガクガクしていました。

 

会社に着くと、社員の方がひととおり社内を案内してくださいました。

研修中の方や、社内勤務の方々が、黙々とパソコンに向かい打ち込んでいます。

す、すごーーーい・・・。

その雰囲気に圧倒されてしまいました。

 

そして、少し離れたところの席で、まずは実技テストです。

テープを渡され、30分ほど入力。

 

で、できない・・・ _| ̄|○

 

以前の登録事務所でのトライアルのときもほんとうに緊張したけど、

今回はウルトラ級。

だって、背後でずーーーーっと見てるんですよ、担当者の方が。

しかも、ここのキーボード、スペースキーとかシフトキーの配列がちょっと違う。

なんだこりゃ (゜_゜;)

単語登録も使えないし、省入力変換候補も出てきません。

手が震える・・・。

いつものペースで打てなーーーーいっっ!!!

 

結局。

必死でがんばったのに、

30分の時間をいただいて、テープのカウンターを見るとたったの3分ほどしか起こせていません。

でき上がった原稿は数行。

そして、背後で見ていた担当の方がひとこと。

「入力、遅いねぇ。 それと、数字キーを打ち込むとき、手元を見ていたでしょう。」

 

・・・・。 ぐわ、もうだめだ。

 

担当者の情けか、その後、国語と一般常識問題のテストも受ける。

か、書けない・・・ _| ̄|○


この速記会社の問題、すごーく難しいとは聞いていたケド。

ほんとだよーーー(T.T)

 

絶望的な状況で、

担当者の方の採点が終わるのを待ちました。

「最初から無理だと思っていたんだから、会社の様子を見られただけでもよかったよ・・・」

と、少し自分をなぐさめながら、結果が出るのを待ちました。

 

ツカツカツカと、担当者が答案用紙を持ってわたしの前に。

「うだうだと話を引っぱられるのはいやでしょう。だから、まず結果を言いますね。

あなたは、落第です。」

 

 

・・・。

 

わかっていたよ。わかっていたんだけど。

がっくり落ちていた肩が、これでもかというぐらいに、さらに落ち込みました。

 

ところが。

わたしはその後、担当者の方から思いがけない言葉をいただいたんです・・・。

 

不合格なのに合格?

 

あこがれの大手速記会社の在宅スタッフをめざして、

募集条件に見合っていないわたしが、

何とか採用試験を受けるところまできたけれど。

 

やっぱり、

案の定、

当然というか、

落第点をとってしまいました。

 

ようするに、不採用決定ということです。

 

ところが、

肩を落とすわたしに向かって、担当者の方はこう言ったのです。

 

「やってみる?」

 

「・・・?」   ← わたしの心の中。

 

「やる気、ある?」  ← 担当者のコトバ。

 

「は、はい・・・ 。  へ?」  ← わたしの返事。

 

担当者の方の話によると、

会社の上部の方が、わたしが送った履歴書を見て、

「ちょっとは経験があるみたいだし、

これだけ環境が整っているのなら、(落としてしまっては) もったいないでしょう」

とおっしゃってくださったらしいのです。

 

ならくの底から、ほそーーいクモの糸で引き上げられるがごとく、

わたしはそのお言葉で、なんと、在宅スタッフに採用されるはこびとなりました。

し、信じられない・・・(涙)

 

その後、その担当者の方は、

わたしの試験結果から、

わたしに足りないこと、

これから仕事をしていく上で注意すべきこと、

そして、会社のこと、特にこちらで採用している「親指シフト」という入力法のことなどを

細かく説明してくださいました。

そして、速記反訳のコツなどが記してある教則本のような小冊子、

親指シフト練習用のソフトが収録されているCD などを帰りに持たせてくださいました。

 

晴れて、わたしは速記会社の在宅スタッフになることができました。

学歴はほぼ高卒のわたし。

採用試験も不合格だったはずなのに。

 

努力はちゃぁんと実るのです。

 

 

採用試験必殺マル秘情報!

 

会社の募集条件にも見合っていないで、

採用試験でも落第点をとった、

そんなわたしが、どうして、在宅スタッフに採用してもらえたのか。

 

考えてみるに、

会社は、わたしのヤル気をかってくれたんだと思います。

考えてみなくても、

きっと、そうだと思います。

 

経験者だった、という部分もかなり大きな要因になっているとは思いますが、

ほとんど何も入力できなかった実技試験。

やっとのことで打ち込んだデータさえ、

チェックを入れて返された原稿は、赤ペンだらけでした。

 

一般常識問題や国語テストも、

「もうちょっと新聞読んだほうがいいよ」 と言われてしまう始末。

それでも、採用してもらえたのは・・・。

 

採用されたあと、担当者の方と何度かメールのやりとりをして、

わたしの第一印象についてこう書かれていたことがありました。

「身なりをきちんと整えたひと。 努力家だと思いました」

そして、「期待しています」 と、続いていました。


試験の日、主婦の、生活のにおいが少しでも薄れるように、

でも、バリバリのキャリアウーマンふうな強すぎる印象も避けて、

さわやかな感じのスーツで行きました。

そして、決め手となったかもしれない履歴書は、

ふつうの、文房具屋さんで売っているような、写真をはりつける履歴書のほかに、

レポート用紙に2枚、

今までの経歴と(ホームページから受注していたことは除く)、

現在のパソコン環境

・使用しているパソコンの機種、OS

・インストールしてあるテープ起こし関連のソフト(Word、一太郎、ATOK…)

・トランスクライバーの型名

・プリンターの機種名

・導入しているセキュリティーソフトのこと

などを、なるべく読みやすいようにまとめて、

とにかくていねいに書いて、一緒に送ってありました。

 

それを見て、会社の方が、

「これだけ環境が整っているのなら、もったいない」 とおっしゃってくださったようなのです。

 

正直、会社のホームページの募集要項にあった大卒者という条件を見て、

「学歴を重視するんだ・・・」 と思ってしまっていました。

でも、ちゃんと、やる気を見てくれていたのです。

その証拠に、

後日、驚くような、こんな出来事がありました。

 

ある日、会社からわたしあてに届いた一通の封書。

中をあけてみると、見知らぬ女性の履歴書が入っていました。

びっくりして、申しわけないと思いつつ思わず開いてしまったその履歴書には、

その女性の立派な経歴が記してありました。

 

超有名な名門四年制大学卒。

超有名な航空会社で何年間も勤めたあと、結婚を機に退職。

もしかしたら、英語のテープ起こしもできるかもしれないぐらいの方でした。

なんでこんなものがわたしあてに・・・。

急いで会社に問い合わせると、

やっぱり手違いで送付してしまったとのこと。

履歴書を見て不採用と判断された場合は、履歴書はその方に返送されるんだそうです。

 

そんな、個人情報ありありの大切な書類を間違って送付するなんて、

そのときは、ちょっとあんまりな会社だなと思いましたけど、

あれだけの経歴の持ち主を、履歴書を見ただけで落とすというのは、

やっぱり、その履歴書の奥に、やる気を見ているんだとほんとうに実感しました。

もう、なんて書いてあったか忘れてしまったけど、

その方の書いた志望動機は、かなりあっさりとしたものでした。

 

もしかしたら、その方は、

まずは履歴書を送って、面接でしっかりアピールするつもりだったのかもしれません。

わたしと違って、募集条件にはぴったりマッチしている方なので、

まさか履歴書で落とされるなんて思いもしないはず。

きっと、必死さがなかった・・・。

 

何はともあれ、

会社が求めているもの、それは、多少つらい仕事でも、がんばり通せるやる気。

ウラを返せば、

実は、それぐらいやる気がないと、続けられないような仕事だってことなんです。